熊本の「事件」で知ったこと
掲載日:2017年12月02日
熊本市議会で11月下旬、「事件」がおきた。女性市議が生後7カ月の長男を連れて本会議場に入り、議会の開始が40分遅れたのだ。ワイドショーで格好の話題となった。
非常識と言い切れないのは、海外では実例があることだ。欧州議会では例外的に同伴を認めているという。豪州やチリの女性議員が議会の自席で授乳する姿がネットやテレビでも流れた。
実はニュースを耳にしたとき、私はあまり共感できなかった。しかし、世界の映像を見るにつれて「こんなに普通のことなのか。だったら子連れ議会もいいんじゃないか」、と思うようになった。
「保育園落ちた日本死ね」くらいのインパクトで若い女性が政治に目を向けるきっかけになるのではと期待するようになった。
スイスのシンクタンクが毎年発表する男女格差(ジェンダーギャップ)指数で、日本はまた順位を下げた。
世界144カ国中114位。政治、経済、健康、教育の四つの指標で数値が出され、総合して順位を出す。日本は政治、経済の分野での格差が大きいとされ、順位が低い。
私は講演では必ずこの数字を紹介する。現状を知ることが重要だと思うからだ。先日も20代の働く女性向けの講座でふれたら「なぜそういうことを知らされていないんでしょうか」と質問された。
報道はされている。しかし、扱いが小さく、多くの人へ問題提起するほどの影響力を持ってはいない。日頃から問題意識がないと、気がつかなくて当然だろう。
先進国の多くは、管理職に占める女性の割合は3割前後だ。「日本の伝統」からの脱皮を進めていくには、世界の実例をどんどん共有していくことが有効だと思っている。(福姫)
※この記事は朝日新聞朝刊「経済気象台」に掲載された記事を朝日新聞社の承諾のもと再掲したものです(承諾番号:20-2620)。この記事について、朝日新聞社に無断で転載することを禁じます。