時代の働き方に合わせて
掲載日:2015年04月04日
この10年近く、女性の育休取得率はおおむね8割を超えて推移している。
と聞くと、ずいぶん子育て中の女性が働いているように感じるが、数字の分母には出産前に辞めた人は入っていない。「第1子を出産して約6割の女性が仕事を辞める」状況は、過去30年、ほぼ変わっていない。仕事を辞めて子育てが一段落してパートで戻った場合と、育休を取って正社員のまま続けた場合の生涯賃金の差は、2億円近いという。
黙っていても男性の賃金が年齢とともに上がった時代ならまだしも、いまどき、いつ倒産やリストラの憂き目にあうかわからない。夫と妻2人で働くことは、家計のリスク分散でもある。
30代後半以降の女性は高卒より大卒のほうが、働く人は少ない。主婦の再就職は困難を極め、「そんな仕事なら、専業主婦のほうがいい」と子育てに専念する人もいて、高学歴の女性ほど仕事をしていない。日本経済にとって大きな損失だ。
諸悪の根源は、日本企業の長時間労働の慣習と転勤システムにあると思っている。もちろん、男性にも女性にも根強い「家事や育児は女性がするものだ」という役割分担意識は言わずもがなだ。
自分の能力を発揮できずもんもんと過ごしてきた女性たち、結婚も子どももあきらめて仕事をしてきた女性たち。「時代」がうみ出したこうした現象が、いま人口減少と経済停滞を招いている。
近年、トップ自らが長時間労働是正の大号令をかける企業や、夫の転勤先の近くで妻も働けるようにする配偶者転勤同行制度を採用する企業もある。働き方に合わせて柔軟にしくみを変えていく。女性が辞めなくていい方法を、企業や社会は本気になって考えてほしい。
(福姫)
※この記事は朝日新聞朝刊「経済気象台」に掲載された記事を朝日新聞社の承諾のもと再掲したものです(承諾番号:20-2620)。この記事について、朝日新聞社に無断で転載することを禁じます。