朝日新聞朝刊「経済気象台」

意欲高い女性の起業家

 成長戦略の柱の一つとして、安倍政権が上場企業すべてに「女性の役員を最低1人は入れてほしい」と求めてから、2年。今年の株主総会では、かなりの企業で女性役員が誕生すると思われる。

 女性管理職を増やすには、今国会で成立するであろう「女性活躍推進法案」が効力を発揮する。従業員300人超の企業に、行動計画づくりなどを義務づける。社内をじっくり調査して、実効性のある計画を望みたい。

 一方、さきごろ発表された東京商工リサーチの約267万社の調査によると、女性社長は2010年から14年にかけて10万人増加し、14年は全国平均で11・5%だった。人数だけでなく、その割合も、確実に伸びている。

 女性の場合、創業よりも親や配偶者などから事業を引き継ぐ「同族継承」が多い。私のまわりにも「息子に継承するまでのつなぎ」と話す女性経営者は多い。しかし、最近では、女性が自ら起業するケースが目立つと思う。

 起業のきっかけはさまざまだ。これまでの仕事の経験をいかす人、フラワーアレンジメントやアロマといった稽古ごとを極めた延長で事業にする人、社会的使命を感じるケースもあるだろう。独身やシングルマザーの人もいれば、夫の扶養の範囲でプチ起業をめざす人もいる。「自分らしくありたい」「人の役に立ちたい」という欲求が強く堅実なのは、女性起業家の特徴だ。意欲の高い女性は多い。

 政府が掲げる「20年までに指導的地位に占める女性の割合を30%に」をいち早く達成する立役者は、こうした起業家なのかもしれない。女性社長は女性を雇う例が多く、活躍の場が広がる効果も期待できる。

 (福姫)

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