子を産み育てたい社会に
掲載日:2015年05月12日
30代前半の女性の知り合いが、卵子凍結した。乳がんで乳房を全摘する前の決断だ。いまから15年ほど前、私も友人と「海外に卵子凍結をしに行こうか」と話したことがあるが、結局、決断できないまま時期を逃した。
30~40代の女性の未婚率があがってきたのは、1980年代後半~90年代だった。「いつかいい人に出会う」「いつでも産める」と思いながら、結婚や出産を先延ばしにしてきたのだろう。いまの女性は若いころから「産む性」を意識して行動している点が違うと感じる。変わらないのは、大半の人が結婚や子どもを希望していることだ。
「女性は婚活・妊活をがんばっても、男性にその気がない。誘ってくるのは既婚のおじさんばかりだ」という声を聞くと、日本の少子化の原因は、男性の行動にあるのではないかとつい思いたくなってしまう。女性の初婚や第1子出産の平均年齢は、いまや30歳前後だ。このままでは少子化、人口減少は止まらない。もっと若いうちに子どもを産み育てたくなる社会に変えていくべきではないか。
たとえば、フランスのPACS(パックス)のように、法律婚と同等の権利を認める事実婚のような制度をつくったらどうだろう。結婚のハードルが下がり、出生数も増えるかもしれない。
少子化対策に成功している先進諸国は「女性が社会で活躍している」「男性の家事育児参画度が高い」に加えて、「婚外子が多い」という特徴がある。「日本の伝統は」などと言っているうちに、人口はより減っていきかねない。想像もしていなかった卵子凍結が日本でもできるのだから、時代に合わせた社会の変化に期待したい。(福姫)
※この記事は朝日新聞朝刊「経済気象台」に掲載された記事を朝日新聞社の承諾のもと再掲したものです(承諾番号:20-2620)。この記事について、朝日新聞社に無断で転載することを禁じます。