朝日新聞朝刊「経済気象台」

女性活躍、最後のチャンス

 女性活躍推進法が8月末に成立した。この法律では、従業員301人以上の企業は、女性登用の数値目標を含めた行動計画の策定と公表が義務になっている。採用に占める女性の割合や働く女性の勤続年数などの状況を把握し、課題を分析して、施行の来年4月までに計画を届け出る必要がある。

 女性を役員や管理職にするという議論では、必ず「男女公平なのに、女性にゲタを履かせるのか」と批判する人がいる。しかし、家庭での責任は女性にあるとして、男性にこそゲタを履かせてきたのが、これまでの日本社会だったのではないか。法律が成立したいまだからこそ、大いに女性にゲタを履かせる必要があると思う。

 事業主への行動計画の義務づけといえば、10年前に施行された次世代育成支援対策推進法にもあった。少子化が急速に進んでいることを背景に、従業員が仕事と家庭を両立できるよう配慮を促そうという理念からできた法律だ。当時、「男性の育児休業の取得目標を200%達成している」と威張っていた友人がいた。大企業なのに目標の対象は1人、すなわち2人とって、200%。「なんだかなあ」と思った記憶がある。

 女性活躍推進法に罰則規定はない。だからといって、そんな形だけのおざなりな計画になっては困る。「家事や子育ては、夫も妻も一緒にする」という前提条件にたたないと、失敗する。女性が普通に活躍できる社会へと、男性主体の企業の価値観を変える大事業がこの法律であり、日本が変わる最後のチャンスだと思う。

 新法は、10年の時限立法だ。男性ばかりで培ってきた企業文化を、根幹から変える勢いで取り組んでほしい。(福姫)

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