朝日新聞朝刊「経済気象台」

企業格差は地域間格差

 大手の企業ボーナス額が発表されるこの季節は、心が辛くなるときでもある。20人ほどの会社を経営する立場として、社員にどれだけのボーナスを出せるかは、会社の業績と同じく「社長の成績表」みたいなものだからだ。

 経団連の発表によると、従業員500人以上の大手企業の今夏のボーナスは、前年より2・4%増えて平均で91万3千円だった。

 この数字を、全国に400万社近くある企業の99%以上を占める中小企業の経営者は、どんな思いで眺めているのだろう。「社員に高い給料やボーナスを出して、いい会社になりたい」と日々努力しているからこそ、「この数字、社員に見てほしくないなあ」と感じた中小企業経営者もいるのではないか。

 雇用者5624万人のうち中小企業で働く約7割の人々も、自分のボーナスと比べてどう感じただろう。

 格差の論議では、正社員と非正規雇用の問題が注目されるが、実は大企業と中小企業の年収格差は大きい。同じ正社員でも、100人以下の企業で働く人は、1千人以上の企業で働く人の「賃金7割、年収6割、賞与3割」なのだという。

 大企業は東京に集中しているから、大企業と中小企業で働く人の格差は、東京と地方の格差の問題でもある。キラリと光る小さな会社が全国に増えて、それぞれの地域で経営者もそこで働く人も輝く、そんな豊かな日本を描いていきたい。

 企業規模によって働く人の社会保険料の料率を変えるなどして、小さな会社に勤める社員の手取り収入を増やすことはできないか。働くことに誇りが持てる中小企業が増えていくことが、これからの日本にとって重要なことだと思う。

 (福姫)

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