朝日新聞朝刊「経済気象台」

パパの子育てが普通の国

 女性が参政権を獲得して100年、国会議員の4割近くを女性が占め、女性が活躍するデンマークを訪れた。

 首都コペンハーゲンを歩くと目にとまるのは、快適に整備された専用道を疾走する自転車の群れだ。子どもを前に乗せたかご付き三輪自転車に男性が乗り、かなりのスピードで駆け抜けて行く。

 そんなママチャリならぬパパチャリが幅をきかせる国では、男性の家事や育児は当たり前過ぎて、「イクメン」は流行語にもならない。子どもができたときの父親休暇14日間は、100%近い取得率だという。育児休業の日数は、男性は女性の10分の1程度だと、女性たちは不満げだったが。

 男性たちが「伝統的に」家事や育児をしてきたわけではないという。1960年代に女性の社会進出が進むなかで70年代にかけて法律が整い、80年代に制度が整ってきた。

 父親休暇の制度が始まった当初は、日本と同じように「男がそんなことで仕事を休めるか」と及び腰だったそうだ。

 「価値観が変わり行動も変わるには、年月が必要です。私たちの世代が恩恵を被っています」。こう話す子育て中の女性の言葉が、印象的だった。

 日本は、男女雇用機会均等法が成立したのは80年代、育児休業法と改正均等法は90年代だ。企業において育休などの制度の活用が本格化したのは2000年代。いまは家庭科の男女共修で育った世代が社会で活躍する時代だ。こう考えると、これから年月を重ねて価値観や社会は変化していくと予想される。

 税金は高くとも、幸福度の高い国づくりを実現し、女性の活躍とともに出生率も上昇したデンマーク。学ぶところは多い。

 (福姫)

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